(499)バスとシャワー
テレビでよく入浴シーンを見かけます。旅番組では度々「撮影のためバスタオルを着用しています」という断り書きが出ます。真似をしてバスタオルで入浴する人がいるのでしょうか。
そもそもこんな断りをすること自体異常です。日本の風呂では殆どのところでタオルを浴槽内に入れることが衛生上の観点から禁じられているはずです。撮影のためやむを得ずというのなら、そのシーンをカットすべきなのです。これなら最近増えてきた水着での混浴のほうが許せる気がします。
その点昔の日本映画に見られた入浴シーンは浴槽に入る瞬間を飛ばし、湯船に浸かっている場面から撮していました。それで充分話はつながるのです。入るところは見る人の頭の中で想像するだけです。かつて上原謙と高峰三枝子が演じた旧国鉄のCMも温泉の中で語らう夫婦の様子をほのぼのとした味で見せてくれました。タオルをどのように使ったかなんて考えたこともありません。
入浴シーンといえば欧米の映画も名画面がありました。いちいち題名を覚えていませんが、エリザベス・テーラーや二人のヘップバーン、ソフィア・ローレン、カトリーヌ・ドヌーブなどなど。いずれもバスタブに一杯石鹸の泡を浮かし半身は全く見えません。本当に欧米ではあんなことをして入浴するのかと思っていました。
洋式の入浴を初めて経験したのは恐らく初めての海外旅行となったフィリピンだったと思います。マニラのホテルはバスルームがなくシャワールームでした。シャワーだけで出るのは日頃日本式の浴槽に浸かる習慣の私にとってカルチュアショックでした。それでも海水浴場やプールでシャワーを経験している自分にとって、大きな問題ではありません。
むしろセブ島のホテルでのバスです。欧米の映画を見馴れていたはずの私ですが、バスタブのどちらが頭を置くほうかわかりません。そんなところまで注意して映画を見ていなかったのです。蛇口のある側が頭なのか、その逆なのか。その点和式の風呂ではそんなことに神経を使う必要がありません。
小さい石鹸が置いてありました。バスタブから湯が流れ出るとフロアを濡らしてしまうというくらいの知識はありましたから、タブの中で石鹸を使いました。映画で見たように泡だらけにはなりません。これで映画は女優の裸身が見えないようオーバーになっているということに気づきました。
一緒に行った友人は部屋が違いましたが、湯を出しっぱなしにしたため寝室側にまで流れ出てきたとあとで聞きました。
そのうち日本のホテルに泊まる機会が増え、なんとなくバスの使い方を心得てきました。しかし試行錯誤の末見出した入り方ですから、欧米人と一緒に入浴するようなことがあれば、方法が違うと指摘されるかもしれません。子どもと違って今更教えてもらえませんから、生涯我流でバスを使うしかありません。もっともそれで人に迷惑をかけているわけでもありませんから。
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