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(507)賞味期限

 賞味期限を偽ったというニュースが流れます。そのたびに思うのは賞味期限を誰が判定するのかということです。新聞によれば一応の基準が設けられているそうです。その基準がおかしいと考えてしまいます。

 昔は消費者がそれぞれ判断基準を持っていました。田舎暮らしをしていると、山間部には海の幸が届かないか、届いてもかなりの日数を要しています。そのため塩漬けにしたり、干物にするなどの加工が施されていました。あとは買い手の判断です。

 同様漁師町に山の産物が届くのも収穫後相当の日数を経てからです。日本の北から南まで1~2日で届く今のような輸送手段がありません。私が東京に来てからでも、大阪の梅田駅と東京の汐留駅の間に、生鮮食料品を1日で運ぶ貨物列車が運行されるようになったというニュースが出たくらいです。

 「賞味」という言葉自体がおかしいのです。むしろ製造月日を明確に表示してくれた方がありがたいと思います。確かに一時期、製造月日の表示が義務づけられたことがありました。アメリカあたりからの日本への輸送日数がかかるので、平等性を欠くという圧力に屈し消費期限とか賞味期限の表示に変更したということです。

 缶詰でも缶の底に製造年月日が刻まれていました。一部記号を使っていましたが、記号の読み方を公開していたので、消費者もそれでいつの製造かわかりました。むしろ今のように表示についてうるさくなってからの方が、缶に刻まれた日にちは製造日なのか、消費期限なのか混乱します。

 生ものは出来るだけ早く、缶詰は瓶詰めより長期間の保存に耐えるというのは常識でした。生ものでも塩漬けや燻製にすれば保存できるのを昔の人はみんな知っています。それでなければ都のあった京都でおいしい食べ物が食べられるわけがありません。京都の食文化は海辺や山の上で取れた食材を巧みに加工して持ち込まれ、手をかけて育てたものなのです。

 缶詰や乾物に賞味期限をつけるばかばかしさ。製造日さえ明示してあればそれでよいのです。さらに付け加えれば輸入食品などが増えた現在のことですから、製造国を明示してあれば充分です。あとは消費者が判断すべきですし、そこまで消費者を馬鹿にするものではないでしょう。

 あまりにも消費者保護を旗印にするものですから、消費者に甘えが生じしっかり監督しない行政が悪いという論になってしまうのです。

 ウイスキーなどの酒類はよく寝かされたものほど質がよいといいます。梅干しは白い粉が出るほどうまみが増します。確かに樽の中で寝かせるのと、瓶に入ったものでは品質に違いが生じます。ビールを1年もおいておけば品質が変化するでしょう。しかしいつまでに飲むようにというより、いつ作ったのかの表示があれば買う方が注意します。

 実は一週間ほど前、非常食としておいてあった乾パンの缶詰を開けました。期限が2002年の12月とありましたから、5年過ぎています。カビは生えていませんし、食べてもごく普通に香ばしい味がしました。当然というか今のところ腹をこわしません。

 魚の干物、乾燥芋、梅干しなどは本来保存食です。保存食というのは少々の年月で腐るものではありません。同じ保存食でも山伏の弁当として作られた吉野の柿の葉寿司と違います。といっても材料の鯖は紀州から酢漬けにして運ばれてきたものです。かといって長期間保存するものでもありません。それを消費者も承知しています。

 奈良は置き薬のメーカーが多くありました。それなのに富山の方からのセールスもあります。年に1回程度訪ねてくる売人が置き薬の箱を改め、不足した薬を補充して帰ります。このような保存に耐えるものにまで消費期限や賞味期限をつけるのは行き過ぎではないでしょうか。

 先ほどの乾パンの例ではありませんが、缶詰になった食品は開封しない限り意外と長持ちするものです。だからこそ保存食、緊急食としての役を果たせるのです。それを一律に法律で規制するのは笑止千万といわざるを得ません。

 もちろん消費期限切れや売れ残り製品を集めて再加工し、新しい賞味期限を表示して販売するなどは商人の風上に置けない行為です。ただ考えるのは商品それぞれの特長があるのですから、単に規制ばかり加えても意味がないと思います。

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